皆さんこんにちは
有限会社青木農園緑販の更新担当の中西です。
〜樹木の価値を守る〜
樹木生産卸業では、圃場や育苗施設で樹木を育てるだけでなく、注文された樹木を安全に掘り取り、指定された現場へ届ける必要があります。
樹木は、掘り取った瞬間から根の吸水能力が低下し、乾燥や温度変化の影響を受けやすくなります。
幹や枝が折れたり、根鉢が崩れたりすると、長い年月をかけて育てた樹木の商品価値が大きく低下します。
そのため、掘り取りから根巻き、積込み、輸送、引き渡しまで、樹木を生きた商品として扱う繊細な技術が必要です
樹木は、季節によって生理状態が変化します。
葉や枝が活発に成長する時期は、水分を多く必要とします。その時期に根を大きく切って掘り取ると、吸水量が不足し、葉がしおれたり枯れたりする可能性があります。
落葉樹では、葉を落として休眠している時期が移植に適している場合があります
常緑樹や針葉樹でも、真夏や厳寒期を避け、樹木への負担が少ない時期を選ぶことがあります。
ただし、工事の工程や顧客の都合によって、理想的な時期に出荷できるとは限りません。
適期以外に出荷する場合は、枝葉の量を調整する、根鉢を大きくする、蒸散を抑える処理を行う、到着後の灌水を徹底するなど、追加の対策が必要です。
圃場で育った樹木を掘り取る際は、根元の土を残した根鉢をつくります。
根鉢には、樹木を支えることと、吸水に必要な細根を守る役割があります
根鉢が小さすぎると、多くの根を失い、植え付け後に活着しにくくなります。
反対に、必要以上に大きくすると重量が増え、掘り取りや輸送が難しくなります。
幹の太さ、樹高、樹種、根の張り方、移植時期などを考慮して、適切な根鉢寸法を決めます。
浅く広く根が広がる樹種と、比較的深く根を伸ばす樹種では、根鉢の形も異なります。
地上部の見た目だけで一律に決めず、樹木ごとの根系を理解することが重要です。
掘り取りでは、根鉢の外周に沿って土を掘り、伸びている根を切断します。
太い根を無理に引きちぎると、根鉢内部まで割れたり、幹へ大きな力が加わったりする可能性があります。
剪定ばさみ、のこぎり、専用の掘り取り機械などを使用し、根をきれいに切ります✂️
切り口が大きく裂けると、腐敗や病原菌侵入の原因になる場合があります。
掘り取り中は、根鉢の土が乾燥しないように注意します。
風が強い日や気温が高い日は、露出した根が短時間で乾く可能性があります。
掘り取り後すぐに根巻きを行うか、濡れた資材で一時的に保護します。
大型樹木では、バックホウやクレーンを使用することがあります。
機械の力で根鉢や幹を傷つけないよう、オペレーターと作業員が合図を合わせます。
掘り取った根鉢は、麻布、わら、ロープ、専用ネットなどで包みます。
この作業を根巻きと呼びます
根巻きによって土の崩れを防ぎ、細根を乾燥や衝撃から守ります。
麻布を根鉢へ密着させ、しわや緩みが少ない状態に整えます。
ロープは、根鉢全体へ均等に力がかかるように掛けます。
締め付けが弱すぎると輸送中に土が崩れ、強すぎると根鉢を変形させる可能性があります。
大型樹木では、根鉢の底面までロープを回し、吊り上げ時に崩れないようにします。
根鉢の土質によっても難しさは変わります。
粘りのある土は形を保ちやすい一方、砂質土は崩れやすいため、より丁寧な根巻きが必要です。
樹木をトラックへ積み込む際は、幹や枝が車両、クレーン、他の樹木へ接触しないようにします️
幹へワイヤーロープを直接掛けると、樹皮が傷ついたり、幹へ食い込んだりする可能性があります。
幅のあるベルトスリングや保護材を使用し、荷重を分散させます。
枝が広がっている場合は、折れない範囲でまとめます。
無理に強く縛ると、枝の付け根が裂けたり、葉が傷んだりします。
葉や細枝を守りながら、輸送車両の幅や高さに収まる形へ整えます。
樹形の正面や見せ場となる枝を把握し、傷つきやすい部分には個別に養生を行います。
樹木は傷が付いてもすぐには症状が現れない場合があります。
輸送後に樹皮がはがれたり、枝が枯れたりすることもあるため、積込み時の丁寧な扱いが重要です。
大型樹木は、根鉢の重量を含めると数百キログラムから数トンになることがあります。
積込みや荷降ろしにはクレーンを使用します️
吊り上げる際は、根鉢を主に支え、幹には姿勢を保つための補助的な力をかけます。
幹だけで樹木全体を吊り上げると、樹皮や内部組織を傷める危険があります。
根鉢へ掛けた吊り具がずれないか、試し吊りで確認します。
樹木は形が不規則で重心が分かりにくいため、少し浮かせて傾きを確認し、必要に応じて吊り位置を調整します。
枝や幹がクレーンのワイヤーへ触れないよう、吊り天秤を使用する場合もあります。
吊り上げ中は、樹木の下へ人を入れません。
風で樹冠があおられることがあるため、必要に応じて誘導用のロープを使い、安全な位置から姿勢を整えます。
トラックへ積み込む際は、樹木の重量と形状を考えて配置します
重い樹木を片側へ集中させると、車両の走行安定性へ影響します。
重量を分散させ、車両の積載能力を超えないようにします。
根鉢が転がらないよう、角材や固定具を使って安定させます。
幹や枝は、走行中の風や振動で動かないように固定します。
ただし、ロープを直接幹へ強く締め付けてはいけません。
保護材を挟み、樹皮を傷つけない位置で固定します。
複数の樹木を積む場合は、枝同士がこすれないよう配置します。
下側の樹木へ上の樹木の重量がかからないようにし、荷降ろし順序も考えて積み込みます。
樹木は、輸送中も葉から水分を失います。
特に葉の多い常緑樹や夏場の輸送では、走行風によって乾燥が進みやすくなります️
必要に応じて枝葉や根鉢をシートで覆い、直接風が当たるのを抑えます。
ただし、完全に密閉すると、内部の温度が上がる場合があります。
気温や輸送時間を考え、遮光と通気のバランスを取ります。
長距離輸送では、出発前に根鉢へ十分に水を含ませます。
途中で乾燥状態を確認し、必要に応じて灌水できる計画を立てることもあります。
到着後にすぐ植え付けできない場合は、日陰へ仮置きし、根鉢を乾燥させないように管理します。
出荷前には、注文内容と樹木が一致しているかを確認します✅
樹種、品種、樹高、幹周、枝張り、本数などを測定し、出荷規格と照合します。
葉の状態、病害虫、枝折れ、幹の傷、根鉢の崩れなども確認します。
似た樹種や品種を取り違えないよう、ラベルや出荷伝票を確認します。
落葉期には葉がないため、外観だけで品種を判別しにくい場合があります。
生産時から続く個体管理が重要です。
出荷前の写真を残しておくと、積込み時の状態や樹形を確認できます
輸送後に問題が生じた場合も、出荷時と到着時の状態を比較しやすくなります。
樹木を良い状態で届けても、到着後の扱いが適切でなければ、乾燥や根鉢崩れが起こります。
納品前に到着時間、荷降ろし方法、クレーンの有無、仮置き場所などを確認します
大型樹木では、現地のクレーン能力や作業スペースが不足していると、荷降ろしできない場合があります。
樹木の重量、根鉢寸法、全体の高さなどを事前に伝えます。
植え付けまで時間が空く場合は、根鉢への灌水や養生方法を案内します。
樹木生産卸業は、トラックへ積み込んだ時点で終わる仕事ではありません。
納品先で安全に受け取られ、植え付け後に活着するところまでを考えた出荷が必要です。
樹木の掘り取りと出荷では、適切な時期を選び、必要な根を残し、根鉢を崩さずに輸送する技術が求められます。
幹や枝を傷つけず、乾燥を防ぎながら、生きた樹木を現場へ届けなければなりません
根巻き、クレーン作業、荷台固定、品質確認、納品先との調整など、どの工程にも専門的な判断が必要です。
数年かけて育てた樹木の価値を最後まで守り、植え付け後の健全な成長へつなげること。
それが、樹木生産卸業における出荷技術の大切な役割なのです。